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大手マス・メディアの信用を毀損する読売新聞の世論調査記事

菅原琢2009/07/24
23日に読売新聞社が掲載した衆院選に向けた世論調査記事について、東大先端研の菅原琢特任准教授がグラフの「おかしさ」を可視化するとともに、メディアの社会的役割について警鐘を鳴らす。
 まずはこちらをご覧いただきたい。リンク先は、読売新聞の「「比例は民主」42%、優勢維持…読売世論調査」という記事である。

 この記事のグラフをよくみていただきたい。頭の中で数字をグラフにできるタイプの人であれば、直感的にこのグラフの「おかしさ」に気がつくだろう。

 もっとわかりやすく、急遽グラフを作成してみた。ひとまず下のグラフをご覧いただきたい。
大手マス・メディアの信用を毀損する読売新聞の世論調査記事|写真


 このグラフの左側は、先の読売新聞謹製のグラフに目盛りを付けたものである。目盛りは、「鳩山代表」の45.9と39.8に合わせてある。

 次に、「麻生首相」の数字と目盛りを比較してみよう。あきらかにおかしいことに気がつくだろう。21.1とあるところの目盛りは31.5くらい、22.1とあるところは32.8くらいである。

 また、左側の図からは、X軸がy=0ではないということも明らかである。「鳩山代表」を基準とした場合、y=0の線は読売の図の倍以上、下に来る。

 右側に、読売のグラフと同じ大きさで、実際の縮尺でグラフを描き置いてみたが、左側の読売オリジナルの図とは明らかに異なる印象を持つだろう。読売の図では、鳩山と麻生の差が詰まっているように見えるが、実際の数値で見れば、それほど差は詰まっていない。鳩山は多少落ちているが、麻生は全く伸びていない。

 読売新聞が、なぜこのように作為的なグラフを掲載したのか、全くわからない。このネットの時代に、このようなグラフを作ればすぐに糾弾されることは目に見えている。この記事も、筆者のオリジナルの発見ではなく、2ちゃんねるで指摘されたことを、可視化しただけである。

 無理やり擁護すれば、グラフィック担当の技術者が、世論調査担当のためによりダイナミックな変動を見せようと頑張った「成果」なのかもしれない。しかし、こんなグラフがデスクや校閲などをすり抜けて世の中に出てしまうこと自体、組織が機能していない証拠である。真にまともな組織なら、相互確認が常に行われ、目利きが要所に配置されているはずである。

 いずれにしろ、読売新聞社はメディアの社会的役割を放棄していると指摘されても、文句は言えないだろう。ただ、これが読売新聞だけで済めばよいが、一部の人々は、これをもって日本のマス・メディア全体の劣化を唱えだすだろう。筆者が知っている限り、他の大手メディアのグラフィック担当は概ねまともな仕事をしている。そういった人たちにまで疑義の目が向けられるとなれば、非常に残念なことである。

 この連載の第1回でもやはり読売新聞社の世論調査の記事について批判を行った。その後、読売新聞社は定例調査を面接からRDDに切り替え、面接調査では(表向きは)内閣支持率の調査を止め、面接とRDDの比較をするというおかしな事態は無くなった。読売新聞社に限定される問題ではなく、マス・メディア全体の信頼に関わることであるので、今回の件についても十分反省し、再発防止に努めていただければと、願って止まない。
◇     ◇     ◇
■プロフィール
すがわら・たく――1976年東京都生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科修士課程、同博士課程修了。博士(法学)。専門は政治学で、「日本政治における農村バイアス」(『日本政治研究』第1巻第1号)ほか、統計分析を中心とした国政や選挙に関する論文多数。 東京大学教養学部でゼミを開講し、データの見方、利用法を教える傍ら、2008年より当社『ザ・選挙』の技術アドバイザーを務めている。
菅原研究室
東京大学 菅原琢ゼミ ウェブサイト

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