政権交代目前と称される次期衆院選が迫るなか、最近、政治のインターネット利用がすすんできている。従来からある当社「ザ・選挙」やyahoo!の「みんなの政治」だけでなく、Googleが「未来を選ぼう衆院選2009」でYoutubeを使って有権者からの質問に候補者が答える形の動画サイトを立ち上げ、楽天は「LOVE JAPAN」という政治献金サイトをオープンし話題になった。
情報の増加により、さらなる中立的な政治情報の提供が求められているなか、佐藤哲也・静岡大准教授は情報技術を用いた政治・経済等の意思決定を支援する手法の構築や、予測市場・集合知(※注1)を用いたアプリケーションの開発など、インターネット上での政治情報の新しい提供方法の試みを続けている。
佐藤准教授はマニフェスト検索サイト「まにけん!」と支持政党推薦(レコメンデーション)システム(※注2)「れこめん?」を8月にオープンさせ、そのシステムの一部を「ザ・選挙」にご提供いただいた。今回の協力に際し、サイトの機能紹介や使い方、政治やインターネットの関係の展望、そして予測市場「shuugi.in」への思いを聞いた。
■ 佐藤哲也(さとう てつや)プロフィール
情報の増加により、さらなる中立的な政治情報の提供が求められているなか、佐藤哲也・静岡大准教授は情報技術を用いた政治・経済等の意思決定を支援する手法の構築や、予測市場・集合知(※注1)を用いたアプリケーションの開発など、インターネット上での政治情報の新しい提供方法の試みを続けている。
佐藤准教授はマニフェスト検索サイト「まにけん!」と支持政党推薦(レコメンデーション)システム(※注2)「れこめん?」を8月にオープンさせ、そのシステムの一部を「ザ・選挙」にご提供いただいた。今回の協力に際し、サイトの機能紹介や使い方、政治やインターネットの関係の展望、そして予測市場「shuugi.in」への思いを聞いた。
■ 佐藤哲也(さとう てつや)プロフィール
1972年神奈川県生まれ。静岡大学情報学部情報社会学科准教授。組織や集団の意思決定に関心があり、政治とインターネットの観点から予測市場について研究をすすめている。2007年に政治の予測市場である「sangi.in」を研究室のゼミ生とともに開発・運営し、日本での予測市場研究の先駆けとなった。現在は衆議院総選挙をテーマにした予測市場「shuugi.in」、マニフェスト検索サイト「まにけん!」、支持政党推薦システム「れこめん?」を運営しており、政治研究者のみならず、一部のネットユーザーの注目も集めている。
静岡大学情報学部佐藤研究室
マニフェスト検索サイト「まにけん!」
予測市場「shuugi.in」
静岡大学情報学部佐藤研究室
マニフェスト検索サイト「まにけん!」
予測市場「shuugi.in」
自分の代わりに投票してくれるロボットを作りたい
――先生の研究のスタートはなんだったんですか。
最初に考えた研究目標のひとつは、「自分の代わりに投票してくれるロボットを作る」ことだったんです。当時から低投票率が問題化していて。投票に行くのはめんどくさいから、「自分の代わりに投票してくれるロボットがあればいいんじゃないか」っていうふうに考えていました。いつになるかわかりませんけど、法案や予算に対する直接投票が可能になればいまよりさらに投票の機会が増えるかもしれないですし。
こういうことを言うと大半の方は拒否反応を示すのですが…現実的には組織政党の強い勧めで投票するって人はいっぱいいるし、そもそも一定の組織政党の支持者であれば、常にその政党に投票するというのは当たり前なので、全自動とはいいませんが、意思決定としては半自動化が必ずしも難しい領域じゃないんですよ。でもみんなが「政治というのは計量化できない部分も含めて人間が結論を出すものだ」という思い込みを持っていることが最大のネックで、現実的にはあまり考えられてないんですけど。実際には判断が難しい場合のみ人間が行えばよいわけで。
――自分の代わりに投票してくれるロボットというのは面白いですね。
そういうロボットをいずれ作ると世の中が変わって面白いだろうな、というのを思ったんです。そのための最初のステップとしては「自分が何を選んだらいいかわからない人にレコメンデーション(支持政党推薦)する」というのがスタートにあって。
最終的にはその人に決めてもらうんですが、投票支援システム、「こういう投票者がお勧めですよ」といったことを計算して出さないといけないですね。そのときになんらかの既存の候補者なり政党を評価して、政策位置をポジショニングして、あなたの位置と近いものを出すというのがシンプルな方法です。推薦技術自体はいろんなものが出ていて実際にはいろんなことができるんですが、当時そういうのがやりたいなと思っていて。
ただ、ある政党の政策の位置をどういうポジショニングするかというのはきわめて政治的行為であるといわざるを得ないんですね。今、毎日新聞や読売新聞がやっている「ボートマッチ」(毎日、読売)も20個程度の政策を評価する形式でやってますが、それぐらいの質問を増やしても、有権者個人が関心のある政策が出てくるとは限らないといった限界もあります。それでもなにかしら評価することが必要で、その評価軸を決定することを、いかに中立的にやるかというところにつながってくるんですよ。
その実験を2000年の総選挙のデータをもとに始めて、2001年の参院選での実験を経て、それがいまの「れこめん?」につながってきているということです。
――最終的にはどういう形が完成ですか。
ひとつは自分に代替する政治ロボットを作るというのが最終ゴールで、そのためにはより正確な状況認識というか、投票者がいま現状の政治をどう理解しているのか?いうことを正確に測るための意識計測のための研究も同時にやりたいなと思っていました。世論の状況を正確に、ネットの特性を生かした新しい測り方みたいのが可能なので、いずれ経験を応用できるだろうなと思っていました。
――経験というのは。
10年ほど前の話ですが、銀行系シンクタンクで勤務していたとき、親会社に出向して、インターネットバンキングの仕事をしていた事がありました。そのときにインターネットと金融業との接点にあたる仕事をさせていただいた経験から、インターネットが社会にどのように影響を与えるのか?ということに強く関心を持ちました。
今では当たり前に実現できていることですが、当時はお客さんが投信を買う時に、銀行振込で投信の販売元に1000万円振り込む、といったスキームのシステムをつくっていました。つまり、1000万円の信用がある取引をインターネットで可能にするインフラを作ることが仕事でした。
それに比べて、選挙の投票をする仕組みのセキュリティって実際にやってみるとあまり高くない。なのに、世間では異常に高いことを要求するんですね。銀行のシステムで1000万円の信用がある取引ができて、なんで有権者が1票の投票もできないんだ、というのが当時からありましたよね。インターネット選挙が現状、まだまだ全然認められていない中で、そういうことが研究関心のもともとの発端にあります。
もうちょっと広い意味での政治参加を含めて、インターネットを使って民主主義の在り方が変わるだろうな、という問題意識が当時からあったんですよ。なので、なるべく実際に応用できるアプリケーションを作っていく研究をしていくと面白いかな、と思って。
――アプリケーションというのは例えばどんなものでしょう。
世論の新しい測り方みたいなところに関心があって、それがいま手がけている「予測市場」もそうですし、また、これは公開していないんですが「kizasi」みたいな「口コミ分析エンジン」に似たようなものも作っていて。ブログの検索といった口コミレベルで分析するものもやっていたのですが、いまはたくさん商用の良いエンジンがあるので自分でやる価値がないのでやってないです。
――投票ロボットを作るために、政党の推薦と世論計測の研究に行き着いたということですね。
そうです。なので研究としては二本柱です。ひとつは有権者の意志決定の支援で、いま運営しているサイトで言うと、これが「まにけん!」と「れこめん?」にあたります。もうひとつは世論計測の新しい仕組みで、予測市場「sangi.in」、「shuugi.in」になります。正確な意志決定のためには正確な現状分析が必要なので、どっちも重要だと考えています。
各党のマニフェストを全文検索できる「まにけん!」
――先生は8月に「まにけん!」をオープンさせました。このサイトについて教えてください。
マニフェストはとても注目されていますが、なかなかふつうの有権者が読み解くのは難しいものです。そこで、マニフェストを見る人の関心に基づいて簡単に閲覧、比較できるようにしたのがマニフェスト検索サイト「まにけん!」です。また、それぞれのマニフェストの政策について、タグ検索機能や評価(レビュー)機能があるので、注目されている政策や有権者の関心がある政策分野もわかります。これは最近とくに注目を集めている集合知的なメカニズムを利用したものです。
政治に関心があってマニフェストを読みたいと思っているけど、マニフェストは読みにくいと思っている人に使ってほしいですね。各党の政策の各論が読めればいいなという風に思っています。
あと、「まにけん!」には「有権者がどういうキーワードの政策に興味があるか」を計測する仕組みがあります。同時にAmazonの評価システム(※注3)を踏襲した評価機能があるので、良い政策、悪い政策を見たいときに使ってほしいです。「いい政策を抽出したい」というのがこのサイトのひとつの目標なので。
――「まにけん!」と同時にオープンした「れこめん?」についても教えてください。
「れこめん?」は、検索機能を使った支持政党推薦システムです。使い方としては、まず関心のある政策について検索をしてもらい、つぎに政党名を出さない形で政策の評価をします。政党のイメージに左右されずに、政党の政策と自分が良いと思う政策のマッチングを行います。
これはサイト運営者があらかじめ定めた争点についてしか評価できない「ボートマッチ」形式の支持政党推薦システムとは違い、「れこめん?」では検索機能を使うことで有権者自身が自由に選んだ政策についての関心やキーワードをもとに、自分の考えと合う政党を見つけ出すことができます。
◇ ◇ ◇
(次ページ「『世の中の雰囲気を計測する』予測市場」へつづく)
※注1 ウェブ上などで集められた多くの人の考えや知識の総計のこと。特定のテーマについて考えを集約させると、雑多なように見えて「案外正しい」側面があるとされる。web2.0のキーワードで、この集合知を使ったシステムとしてはフリーの百科事典「Wikipedia」が典型例とされる。
※注2 ユーザーの興味や関心に応じてどの政党を支持すべきかについての情報を提供する(レコメンデーション)システム。
※注3 Amazonでは、商品を実際に購入した人が5段階で評価をし、コメントをつける機能がある。多くの人から評価を受けることで、その商品の良し悪しについての客観的な評価をサイト上に蓄積することができる。
静岡大学情報学部佐藤研究室
マニフェスト検索サイト「まにけん!」
予測市場「shuugi.in」
※注1 ウェブ上などで集められた多くの人の考えや知識の総計のこと。特定のテーマについて考えを集約させると、雑多なように見えて「案外正しい」側面があるとされる。web2.0のキーワードで、この集合知を使ったシステムとしてはフリーの百科事典「Wikipedia」が典型例とされる。
※注2 ユーザーの興味や関心に応じてどの政党を支持すべきかについての情報を提供する(レコメンデーション)システム。
※注3 Amazonでは、商品を実際に購入した人が5段階で評価をし、コメントをつける機能がある。多くの人から評価を受けることで、その商品の良し悪しについての客観的な評価をサイト上に蓄積することができる。
静岡大学情報学部佐藤研究室
マニフェスト検索サイト「まにけん!」
予測市場「shuugi.in」










